『ううう
緊張する…』

待ち合わせまであと20分もある
緊張して早く来すぎちゃった…

昨日のこともあるけど、男の子と2人きりで出かけるなんて初めてなんだもん…

涼太とさえ2人きりで出かけたことなんてないや
いつもどちらかの友だちか親が一緒だったから

『うーん』
服、変じゃないかな

白のブラウスにピンクの花柄のスカートっていうシンプルな格好だけど…

服屋の前に飾られてるマネキン、かわいい服着てるなぁ
なんでマネキンってあんなにスタイルいいんだろ
うらやましいなぁ

ガラス越しににマネキンをじーっと見ていると、後ろから声をかけられた

「ねぇ」

『え?』

後ろを向くと、知らない男の人が2人立っていた
1人は髪の毛が明るい茶色で、耳にはたくさんピアスを付けてる
もう1人は、金髪だ…

こういう人、苦手なんだけどなぁ…

「めっちゃかわいいじゃん!
ねぇ君、今1人?
俺らとどっか行こうよ
奢るからさ、ね?」
金髪の男の人が、わたしに近づいてきた

怖い

知らない男の人は怖いよ…
逃げようと思ったら、もう1人に手を掴まれた

『っ!』
力が強くてふり払えない

だ、誰か助けて!

「無視すんなよ
いいじゃん、行こうよ」

『やっ…
離してっ…ください…』

男の人はわたしの腕を掴む手にさらに力をいれた

『痛いっ!
離してっ!』

やだよ!!
助けて!!


助けて駿君!!



「お前ら何してんだよ!!」
声が聞こえると同時に、わたしの腕を掴んでいた手が離れた

腕を見ると、手型のあざがついている
わたしはゾッとして、体の震えが止まらなくなった

「おいお前ら!!
桃に傷つけといてただですむと思ってんのか!?」

「いっ痛ぇ!
離せよ!!」
男の人の痛がる声が聞こえる

「お前らだって、桃が嫌がってんのにずっと腕掴んでたろ」
そして、この声は…


見上げると、今まで見たこともないような怖い顔をしている駿君がいた

『しゅ、駿君…』
安心して、涙がポロポロこぼれてきた
なっ、泣いちゃだめ
涙、止まってよ…

「いい加減離せよクソガキ!!」
男の人はそう叫ぶと、駿君の手を振り払った

「もう行こうぜ」

「…チッ」
男の人は舌打ちをすると、そのまま去っていった

「桃、遅くなってごめん
大丈夫か?」
駿君が、泣きそうな顔でわたしを見ている

そんな顔しないで…
助けてくれてありがとう…

「俺がっ…
もっと早く来てれば…!!」

駿君が、強くわたしを抱きしめた

あったかい…

駿君に抱きしめられると、すごく安心する…

「ごめん…
ごめん…桃…」

駿君が何度もわたしに謝る
そんなに自分を責めないで…

『駿君、わたしは大丈夫だから、
助けてくれてありがとう』

「ごめん…」