あなたとのキョリ

✻駿side✻

12月くらいだった

学校から帰ってたら、ダンボールに入って捨てられてる子猫をじっと見ている女の子を見つけた

「こんにちは!
わたしは桃だよ!
よろしくね、子猫ちゃん!」

「にゃ〜」

「あははっ!
かわいいね〜!」

思えば一目惚れだったのかもしれない

子猫と楽しそうに遊ぶその子の姿が目に焼きついて離れなかった

俺はその頃、進路に悩んでいて、いつも暗い気持ちだった
その子は俺にとって周りを明るくしてくれる太陽みたいだった
その子が心の支えだった

その子は雨の日も、傘をさして子猫にエサをあげたり、遊んだりしていた

ある日、その子が来なくなった
子猫も寂しそうにしていた
俺もすごく心配していたし、あの子の光がなくなって、また暗い毎日に戻っていった

一週間後、またその子が現れた
いつものように、子猫のところへ



しかし子猫は、ダンボールごといなくなっていた

その子はそこでしばらく立ち尽くしたあと、糸の切れた操り人形のように地面に足をついた

そしてそこで大声をあげて泣いていた
その子の気持ちに共鳴するように、雨が降り出した

雨が容赦なくその子の背中を濡らしていく

駆け寄って抱きしめてあげたかった
子猫なら大丈夫だよって

その子のことをどうしようもなく守ってあげたかった

その子はまた現れなくなった
でも、子猫のいた場所には、毎日綺麗な花や、エサが置かれていた

俺は、そんな風に人のために泣いたり、笑ったりできるその子のことが、今も変わらず大好きなんだ


なんとなく受験した高校に受かって、入学式に出たとき、少し大人になったその子を見つけて、運命かと思った

俺は
昔と変わらず…
あのときから、その子のことが大好きなんだ

✻駿side end✻