あなたとのキョリ

『あっ
いた!』
中庭にあるベンチに、昼休みに来た男の子がいた
待たせちゃったかな

『お、遅れてごめんなさい!』

「いえ
僕も今来たところですから
大丈夫ですよ」
その人は、優しい笑顔で微笑んだ

『あっ
ありがとうございます…』
優しい人だなぁ…
だって、汗いっぱいかいてる
きっと、ずっと待っててくれたんだ

『あの、
よかったらこれ…』
わたしは自分のハンカチを差し出した

「ありがとうございます
洗って返しますね」
その人は、ハンカチで自分の顔をふいた
今気づいたけど、この人すごく綺麗な顔してる
かっこいいとかじゃなくて、美少年って
感じ

「…あの
僕の顔に何か付いてます?」

『えっ?
あっ…』
すごく綺麗な顔だから見とれちゃった
それに、汗を拭く仕草もすごく綺麗…
って、わたしったらなんてこと考えて…

焦っちゃってあわあわしていると
その人はクスッと笑った
うう…恥ずかしい…

「僕の名前は本庄駿(ほんじょうしゅん)です。」
駿君って言うんだ…
あっ、わたしも名前言わなきゃ

『えっと、わたしは桜田桃です』

「知っていますよ
初めて会ったときから…」
初めて会ったとき?
昼休みのことかな?

「それで、
話したいことは…
えっと」
すると駿君は、頬を赤く染めた
えっ、なに?
なんかわたしまで照れてきちゃった

駿君はふぅ、と一息つくと、
決意したようにわたしを見た

まっすぐな眼差しにに見つめられ、一瞬時間が止まったように感じた


「僕…
いや、俺

桜田さんが好きだ」