あなたとのキョリ

『う〜ん…』
階段を降りてすぐ、
違和感に気がついた

『さっきから両膝痛いなぁ…』
なんだろう
何かしたっけ?

『…きゃっ』
考えてたら、前を見るの忘れてた
誰かにぶつかって転んでしまった

「すみません
大丈夫ですか」
透き通るような綺麗な声
この声、どこかで聞いたことあるような

『ご、ごめんなさい
考え事してて…っ!』
顔をあげてその人の顔を見た瞬間、息が止まるかと思った

相澤さん…
相澤さんの綺麗な顔が、申し訳なさそうにわたしを見ている
どうしよ…
顔見れない…
わたしは反射的に顔をそらしてしまった

あ、ひどいことしちゃった…

『じ、じゃあ
わたしはこれで…
本当にごめんなさい』
相澤さんにひどいことをしてしまった罪悪感で、その場から立ちさろうとしたとき、

「きゃー!」

『へっ?
えっ?』
いきなり相澤さんが悲鳴をあげた
えっ?どうしたの?

「あなた、膝が血だらけじゃない!
大丈夫!?」

『ひ、膝?
き、きゃー!ち、血が出てる?…』
あ!思い出した!
さっき思いっきりドアを開けたとき転んだんだった!
よく今まで気づかなかったな…

ってそれどころじゃない!
ち、血が
どうしよう!

「待ってね!
今止血するから!」
そう言うと、相澤さんは素早くわたしの膝にティッシュを当てた
綺麗な手…
いいなぁ
なんか、女性の手だな

「えっ…と
止まった…かな?」

『す、すごい
ありがとうございます』
血が一瞬で止まった
魔法みたい…

「ごめんね
今絆創膏しか持ってなくて…
家に帰ったら、ちゃんと消毒してね」
そう言うと、相澤さんはポケットから絆創膏を取り出して、わたしの膝に優しく貼ってくれた

『ここまでしてもらってごめんなさい…
助かりました
ありがとうございました』
相澤さん
やっぱりすごくいい人だ

「いいえ
どう致しまして!」
女の子のわたしでもドキッとするような笑顔で微笑んで、相澤さんは廊下を歩いていった

今すぐ涼太に伝えなきゃ
相澤さんなら大丈夫だよって
きっと涼太を幸せにしてくれるよって
相澤さん、すごく優しくていい子だよって!

教室の扉を開けようとしたら、逆に向こうから扉が開いた

「おっ…と
びっくりした
桃、もう大丈夫なのか?」
涼太、あのね、あのね!

『涼太!』

「ん?
どうした?」

『おめでとう!
相澤さんと幸せにね!』
今度は嘘じゃなく、本当の気持ちで言えた

「クスッ
それ昨日も今日も聞いたぞ
ありがとな、桃」

『うん!』
涼太、わたし以上に、幸せになってね!