あなたとのキョリ



何度名前を呼んでも、涼太はわたしを離してくれない

『え?』

不意に涼太がわたしの顎を掴んで、わたしの顔を涼太の方へ向かせる

視線が交わり、一瞬時間が止まったように感じた

『な、なに?』

涼太は無言のままわたしを見つめる

目をそらすことができない


すると、涼太がわたしの顎を上げて、自分の方へ近づけようとする

『やっ、涼太!』

このままじゃ…

恐怖で背中が震えだす
諦めかけて唇をキツく噛んだ瞬間


体が自由になって、目の前で鈍い音が響いた

「涼太…
てめぇ何してんだよ!!」

『あ…』

駿君が息を切らしながら涼太を睨みつけて、

涼太は頬を抑えながら床にへたりこんでいる
押さえている頬から、血が滲んでいる



駿君が、涼太を殴ったんだと悟った

あの優しい駿君が人を殴るなんて
きっとものすごく怒ってるんだ…

「…悪かった…」

「悪かったで済むと思ってんのか!!」

『しゅ、駿君…あの…』

怒鳴り続ける駿君に、わたしはどうしたらいいのかわからなくて、慌てるばかり

「…桃、行くぞ」

『え?あ…』

駿君はわたしの腕を掴むと、わたしを連れて教室を出た

『っ!』

掴まれている腕が痛い…

いつもより強い力で腕を掴んで、早歩きで歩く駿君

わたしよりずっと歩くのが早い駿君に着いていけなくて、ほぼ引きずられているような状態

『駿君…腕…いたい…』

わたしが必死に名前を呼ぶと、駿君はやっと立ち止まってくれた

よかった…

「…俺のこと…
そんなに嫌いになったのか…?」

『え?』

駿君が震える声で呟く

嫌いなんて…
そんなわけない…

毎日、駿君が恋しくて仕方なかった…

「涼太の方がいいのかよ!!」

『っ!?』

駿君が泣くように叫ぶ
突然のことに驚いて思わず体がビクッと震える

そして、駿君はわたしの方に向き直ると
わたしを引き寄せてキスをした

『んっ…!』

いつものキスとは違う…

今の感情をそのままぶつけてるみたいな
すごく乱暴なキス…