あなたとのキョリ


『あ…』

次の日
7組に行ってみると
わたしの願いも虚しく、井上君は窓側の席になっていた

寂しい…
素直にそう思った

「井上くーん」

数人の女の子が
井上君に話しかけている

…なんだろう

こういうときに、違うクラスの寂しさを感じる

わたしも同じクラスだったらな…

って昨日からわたしおかしい!

気がつけば井上君のことばかり考えてる


わたしもしかして…
井上君のこと…?

〈お前のこと好きになるやつなんて
現れねえよ〉

そのとき、
彼の言葉が頭に響いた

そんなことわかってる…

『井上君!!』

わたしは耐えられなくなって
思わず叫んでしまった

『あっ…』

井上君に話しかけていた女の子たちが驚いたように目を見開いている

しまった…

気がついたら
叫んでしまっていた

恥ずかしくなってうつむくと、
わたしの頭に大きな手が乗せられた

「岡崎さん?どうしたの?」

『あっ…井上君…』

井上君がいつもの柔らかい笑顔を浮かべてわたしの前まで来ていた

『っ…』

思わず目が潤む
唇を噛んで、無理やり笑顔を作った

『席替えしたんだね』

「うん
廊下側から離れちゃった」

井上君は残念そうに呟く

わたしだって残念だよ…

『寂しいな…』

「えっ…」

あれ?わたし、今なんて?

恐る恐る井上君を見上げると
少し頬を赤くしながら、驚いた顔をしていた

『じゃ、じゃあ、
わたしっ、もう行くね!』

顔に熱が集まっていく

き、気づいたら呟いてたんだもん!

井上君
急に走り出したからもっと驚いてるよね

うう…
恥ずかしい…

『はぁっ…』

1組に近づいてきた頃
わたしは走るのをやめた


どうしよう…

今のではっきりわかってしまった…

わたし…


井上君が好きなんだ…


『うぅ…』

わたしは気持ちを伝えることなんて
怖くて出来ない

どうしても
彼の言葉が蘇ってくるから

思うだけでいい
それ以上は望まない

自分に必死に言い聞かせて
教室に入った