あなたとのキョリ


『井上君』

「あ、岡崎さん」

月曜日、7組に行くと、メガネをしていない井上君がいた

『やっぱりその方がいいよ』

「そうかな」

井上君は、また照れたように笑って頭をかいた

照れ屋さんなんだね

『クラスの人の反応はどう?』

「びっくりされたよ」

そりゃあびっくりされるよね
ついこないだまでメガネだったのに、急に外したんだもんね

『そろそろ教室戻るよ』

「ああ、うん
ばいばい」

井上君と話してると、なんか癒されるな

穏やかな性格とか話し方だけじゃなくて
あの柔らかい笑顔が、嫌なことを忘れさせてくれる

井上君に手を振って、はずむような気持ちで教室に戻った


「あ、鈴華〜」

教室に戻る途中、いつも7組に会いにいっている友達に声をかけられた

『どうしたの?』

「ただ話しかけてみただけ〜
そういえばね、明日、7組席替えするんだ〜」

『へ、へー』

友達は楽しそうに話してるけど、わたしは少しモヤモヤしていた

「もし廊下側になったら、前よりたくさん話せるね」

『うん…』

友達の話が頭に入ってこない

席替えするってことは、井上君廊下側から離れちゃうかもしれないんだよね

「じゃあね鈴華〜」

『あ、うん』

友達と分かれた後も、わたしは不安でいっぱいになっていた

『あ、あれ?』

井上君が廊下側から離れるからって、なんでこんなに寂しがってるの?

自分の気持ちに動揺しながらも、
どうか井上君が廊下側の席から離れませんように…
と願わずにはいられなかった