あなたとのキョリ


「だから、
メガネをかけてレンズ越しなら、直接顔を見なくていいから、少しは話せるようになるかなって…」

そうだったんだ…

ん?でも

『わたしが話しかけたときは
必ずメガネを外して話してくれてたよね』

「あっ…えと…あれは…
あ!慣れた人だと大丈夫なんだ」

井上君は急に慌てだした

焦ってる様子が少しかわいくておもしろい

『ふふっ』

わたしが笑うと、井上君はなんで笑われてるのかわからないという顔をした

でも、すぐに笑顔になって

「よかった
岡崎さん、笑ってくれて」

『え?』

「岡崎さん、
さっきからずっと暗い顔してたから」

『…ん……』

体の震えはもう止まったけど、腕を掴まれたときの感触が、今も掴まれているかのように残ってる

やっぱりわたし…
恋なんて出来ない…

「…実は
話し声、聞こえてたんだ…
駆けつけようとしたとき…偶然…」

『えっ…』

聞かれてたんだ…

どんな顔をすればいいかわからなくて、井上君から顔をそらす

「ごめん…
聞くつもりはなかったんだ」

わかってる
井上君が謝る必要なんかないよ

「それで…
あいつが言ったことなんだけど…」

井上君が決意したように口を開く

「岡崎さんのこと…
好きになってくれる人、絶対いるから
てゆーか、大好きなやついるから!」

井上君は顔を真っ赤にしながら叫ぶように言った

井上君のその一言で
心がふんわりと軽くなった

『ありがとう
お世辞でも嬉しいよ』

微笑みながらお礼を言うと、井上君はさらに顔を赤くしてうつむいた

『井上君さ、
メガネ外した方がいいよ
せっかくかっこいいのにもったいないよ』

「はあっ!?
お、岡崎さんこそお世辞なんか言わなくていいよ!」

『ふふっ、お世辞じゃないよ
月曜日、7組行くからね
自信をもって、もっと堂々としてなよ』

わたしが人差し指を立ててびしっと井上君の顔の前に出すと、井上君は

「は、はい…」

と言って少し照れたように笑った