いつもと同じ時間に起きて、いつもと同じ制服を着る。
いつもと同じ時間に家を出て、いつもと同じ道を通って学校へ行く。

ひとつだけ違うのは、あなたが隣にいない。
昨日までは、普通に一緒に通ってたのに、今はわたし一人…

あなたから昨日来た電話が、頭から離れない…


《おれ、彼女できたんだ》

『え…?』
かの…じょ…?

《それで、その子が朝一緒に登校しよう
って言ってるから、明日から一緒に登
校できないんだ…
ごめんな?》
電話の向こうから、あなたの心配する声が聞こえてくる。

『大丈夫だよ!
てゆーかすごいね!
彼女できたんだ!』
やだ…

《う、うん…
いきなり告白されて、おれもびっくり
したんだ》
きっと電話の向こうでは、顔を赤くして話してるんだろうな。

『そっかー
おめでとう!』
うそ…
そんなこと全然思ってないくせに…

《おう
ありがとな、桃》
胸が苦しいよ…

『ううん
眠くなっちゃったから、そろそろ寝る
ね。
わたしのことは、心配しなくていいか
ら。彼女さんと、仲良くね。』
仲良くなんてしないで…

《ああ。
おやすみ、桃》

『おやすみー…』
やだ…
やだよ…
その子のところに行かないで…
涼太…


わたし、桜田桃(さくらだもも)は、昨日の夜、ずっと好きだった幼なじみの紺野涼太(こんのりょうた)から彼女ができたという報告を受けた。

小さい頃から、兄妹のように仲が良かった。
小さい頃は、お兄ちゃんみたいで好き、の好きだったのに、いつの間にか恋愛感情に変わっていたんだ。

今頃は…
彼女さんと仲良く喋りながら歩いているのかな…
あなたが隣にいない道は、わたし一人ではとても広く感じた。

学校に着いたのは同じ時間なのに、歩いてる時間はとても長く感じた。