イジワル彼氏の不器用な素顔




「溜め息ついた分だけ幸せ逃げんぞ」



ちょっと甘めの低音ボイス。



その声がするだけでも、女の子達が騒ぐ。



「叶真くーん!」



「おはよう。全然来ないから寂しかった」



コイツが現れた途端、クラスの女の子達があたしに向けていた鋭い視線はどこにいったのか。



みんな目尻を下げ、どこから出すのか甘えた猫撫で声であたしの彼氏様に群がり始める。



こんなのいつも光景だ。



もう慣れっこだし、気にしてない。



コイツがモテるなんてこの学校に入学してからずっと見てるし。



「あー、ハイハイ。大人しくしてたらあとでちゃんと話きいてやるよ」



群がる女子達にサラッと告げると、いきなりあたしの腕を掴んできた。



「俺、コイツに用あるから借りるぞ」



夏帆にそう告げたあたしの彼氏こと柊叶真(ひいらぎとうま)



この人こそがこの学校でいちばんモテる存在。