解放してやろうと思ってたのに、意外な表情を見せられたせいで、それはできなくなった。
「それより、話って何!?」
いきなり逆ギレしだした乃愛の顔はまだ赤いように見える。
素直に恥ずかしいって認めればいいのに、ほんとコイツって。
「おまえって、可愛いな」
からかうように言った俺に、乃愛はギョッとして耳まで赤くなったこと今でもよく覚えてる。
「い、い意味わかんないっ! 用ないなら帰る!」
逃げ去ろうとする乃愛をこの俺がそう簡単に逃すと思うなよ。
咄嗟に乃愛の手を掴んで引き止める。
そして――。
「おまえと付き合うって言ったこと、遊びじゃないから」
そう言った俺の言葉を乃愛はきっと今でも信じてない。
女のちょっとした表情の変化なんか見慣れてたはずなのに、もっと見たいと思うなんて。