はい、風間君の顔面に夏帆の右手のひらが見事にヒット。
「いってー……」
「ふざけんな! 誰があんたみたいな顔がいいだけの女たらしに甘い蜜をやるもんか」
べーっと舌を出して、ふんっとそっぼを向く夏帆。
相変わらず厳しい。
あたしも最初は風間君はどっちかといえば苦手なタイプだった。
カッコイイってだけでチヤホヤされて、いつも違う女の子と一緒にいて、付き合っては別れの頻度が物凄く早いことで有名だし。
でも、高2になってから同じクラスになって、話してみると意外と気さくな人でびっくりした。
もっと気取ってて嫌な奴かと思ってたから。
まぁ、一途じゃないってところはマイナスポイントだけど、風間君の性格は嫌いなタイプじゃないんだよね。
「乃愛もこんなフェロモン垂れ流しまくりなヤツ相手になんかしなくていいんだからね!」
朝からかなりご立腹の夏帆のイライラは、何もしてないあたしにまで飛び火してきた。
うわー、今日はまた一段と怒ってる気がする。
とりあえず、ごまかし笑いを返して気付かれないよう溜め息をついた。

