行くあてもないくせに、荷物をまとめて出て行こうとする俺の足に大空が大泣きしながら抱き着いてきた。
まだ2歳半で何もわかってなかったと思うのに、コイツは小さな力を振り絞って、俺の足にしがみついてたんだ。
母さんがいなくなったことも理解してないはずなのに、大空なりに今までと違うってことを感じ取っていたのかもしれない。
いくら俺が『離せ』って言っても、泣きわめいて首を横に振るだけで離そうとしなかった。
泣きわめく大空を振り払うこともできなかった。
『行っちゃやだ……っ!』
それが、あの時大空が言ったこと。
たったこれだけだったけど、頭に血が上ってた俺を冷静にさせるには十分なひと言だった。
あの言葉を言われた時、俺がいなくなったら……誰が母さんの代わりに大空の大きくなった姿を見てやるんだろうって思った。
父さんだけじゃなく、俺がそれをしてやらなきゃいけないんじゃないかって。
母親の代わりなんて俺には到底無理だけど、大空が大人になるまで側で見てやることはできる。

