「何しにきたの……帰ってよ……。

 もう叶真の顔なんて見たくないの!」



近付いてきた叶真めがけて持っていたクッションを投げつける。



叶真の顔に当たったクッション。



それを避けようともしなかった叶真は、むしろわざと当たったように見えた。



「さっきはごめん」



ごめんって何?



一方的に怒って、あたしにあんなことしておいて。



……ファーストキスだったのにっ。



あたしにだって初めてのキスはこういうのがいいって夢くらいあったのに、それを叶真にあんなふうに奪われるなんて。



「謝るくらいなら、あんなことしないでよ」



泣きながら訴えるあたしに、叶真は目を逸らさずちゃんと受け止めていた。



「俺だって限界だったんだよ。

おまえに少し近付けたと思ったのに、いきなり態度がよそよそしくなって。

乃愛は俺と話せなくても平気なのかもしれないけど、俺は……そんなの、我慢できねぇんだよ」