「ここがお姉ちゃんの部屋です」



2階にある乃愛の部屋の前まで案内してもらうと、ゆっくりと息を吐く。



「悪いけど、弟のことちょっと見ててもらっていいか?

乃愛と話さなきゃいけないことがあるから」



大空は初めてきた場所に緊張しながら、俺の手をぎゅっと握ってくる。



「お兄ちゃん……」



不安そうに俺を呼ぶ大空を抱き上げると頭を撫でる。



「ちょっと乃愛と話すことがあるから、大空はこのお姉ちゃんと一緒に遊んで待っててくれるか?」



不安を与えないように大空に優しく笑いかけると、大空は乃愛の妹の方を見る。



「のあちゃんのお友達?」



「違う。乃愛の妹だよ」



大空を下ろすと、目を見て話をする。



「ボクいい子にしてまってる」



本当は不安なのにそれを隠して強がる大空に俺も勇気をもらう。



乃愛の妹に大空を少しだけ預けて、廊下にひとりになった俺はもう一度深呼吸する。



——コンコン。



返事はないとわかっていながら、部屋のドアをノックする。



そして



「乃愛、俺だけど……入るぞ」



何も返事がない乃愛の部屋へ断りを入れてから入った。