田辺君との内緒の練習を続けること早1週間。
「あの……叶真、あたし……ずっと、ずっとね」
「カット〜。先輩、告白と言っても、もう乃愛先輩と叶真先輩はお付き合いしてるんですから、「好きなの!」くらいの軽い感じでいいんですよ?」
「は、はぁ……」
そんなこと言われても、付き合ってるけど告白は無理なんですなんて言えないよ。
「じゃあ、もう1回やってみましょうか」
「はい」
慣れない練習だけど何とか「好き」の「す」までは言えるようになってきた。
でも、素直になるということがこんなにも苦労するだなんて初めて知ったよ。
あたし昔はどうしてたんだろ。
自分のことなのにさっぱりわからなくて、素直になる難しさを改めて痛感する。
「では、もう1回。今度はお面なしでいってみましょう。
相手の目を見て伝えるっていうことは、とても重要なことだし、気持ちも伝わりやすいですから」
そう言うと田辺君はお手製の叶真そっくりなお面をテーブルの上に置き、あたしをまっすぐに見てきた。
い、いきなりハードルあげないでほしい……。
だけど、ここで逃げてたらあたしはいつまでたっても前になんか進めないんだよね。
ゆっくりとひとつ息を吐くと、田辺君にまっすぐ向き直った。