「なんなら、明日は色でも塗りましょうか?
そしたらリアルすぎて怖いかもしれないですよ」
クスクスと笑っていると、田辺君がノートから顔を覗かせてあたしを見て微笑んでいた。
「乃愛先輩が笑ってる。よかったです」
もしかして緊張を解そうとしてこんなこと言ってくれたのかな。
そんな田辺君の心遣いが今のあたしには嬉しかった。
「今日はいきなりすぎでしたよね。
焦らなくても先輩は逃げていかないから安心して下さい!」
本当に田辺君ていい子だな。
あたしなんかのためにこんなに一生懸命になってくれて。
「ありがとう、田辺君」
この日は結局、雑談するだけで終わって、練習は翌日からの持ち越しになった。

