乃愛が話を終えるまで口を挟むことなくずっと聞いていた。



乃愛の様子が急変したあの日に、まさか元カレがあの場所にいたなんて全然気付かなかった。



あの時そのことに気付いていれば、乃愛の辛さや苦しみを少しでも取り除くことができたのか。



乃愛の過去を聞かされて、正直言葉が出なかった。



「びっくりした? あたしもまさかって思ったよ。

まぁ、ただ単に男の人を見る目がなかったってことだよね」



俺の腕の中にいる乃愛は、何が可笑しいのかクスクスと笑っている。



俺にはそれが強がってるように見えて仕方がない。



「叶真に素直じゃないって口癖みたいに言われてるけど、こういう理由なの。

だから、この先もずっとあたしは素直になんてなれないんだよ」



いつも通りに強がった態度を取る乃愛。



それは自分が変われないって諦めてるように俺には聞こえた。



素直じゃないっていつも言うけど、そんな理由があって素直になれなかったなんて知らなかったから。



強気な態度だって素直じゃないからこその乃愛の言葉の裏返しだって俺はわかってた。



そんな乃愛の強いところも好きだったから、俺はコイツに惹かれたのに。