「あーぁ、擦りむいてるじゃん。
慣れない格好なんかするからだよ。
ほら、手貸して」
いつも優しい先輩から初めて聞く面倒くさそうな声。
先輩の言うとおり、こんな慣れない格好してきたあたしが悪い。
だけど、大丈夫のひと言くらい言ってほしかった。
そうやって思うのは、あたしの我が儘なのかな。
先輩の手を借りて立ち上がる。
「その怪我大したことなさそうだけど、今日のデートは中止にしよう」
思いもしなかったことを言われてショックだった。
「あ、あたしなら大丈夫——」
「乃愛ちゃんがよくても、俺が嫌なんだよ。
家に帰ってちゃんと手当した方がいいよ」
それは先輩の優しさ。
だけど、あたしにはそれが一緒に連れて歩きたくないって言われてるような気がして、先輩と別れたあともその場をしばらく動けなかった。

