「ごめん……。何でもないからっ」
慌てて手で涙を拭うと、叶真の手が伸びてきて、力強く引っ張られる。
ベッドに乗り上げたあたしをしっかりと抱きとめてくれた叶真は、あたしをそのまま抱きしめた。
「叶、真……?」
「……んで泣いてんだよ。
嫌なら嫌だってちゃんと言えよ。
普段は俺に遠慮なく言うくせに」
なんで叶真がそんな辛そうな声出すの。
あたしのこと好きじゃないなら、もう放っておいてほしいのに。
ただの暇つぶしで付き合ってる相手に、どうしてこんなことするのよ。
叶真の考えてることも、気持ちも全然わからない。
わからないのに、叶真の腕を振り解くことができなかった。
いつかは向き合わなきゃいけない過去なら、早い方がいいのかもしれない。
「叶真……あたし、叶真が言うような面白い奴なんかじゃないんだよ」