「今日、叶真のバイト先で見たの」
濡れた髪をタオルで拭きながら、深呼吸したあと話し始める。
「宇野先輩のこと……」
もう二度と口にすることなんてないと思っていた名前。
この名前を口にするだけで、胸が痛くて苦しくなる。
「話したの?」
あたしの過去に何があったか知ってる結乃は、話を聞いただけであたしの様子が急変した理由がすぐにわかっていた。
結乃の質問に首を横に振る。
「あっちは彼女と一緒にいて、あたしには全然気付かなかった」
もう会いたくないと思ってた人だから、あそこで気付かれなくて正直ホッとしてる。
「そっか。まさかあの先輩に会うなんて思ってなかったから、お姉ちゃんもっと取り乱すかと思った。
でも、今のお姉ちゃん見てちょっとホッとした」
膝の上に置いていたあたしの手を結乃が握った。

