頬を手で覆うと、叶真を睨む。



「な、何するのっ」



「キスしてほしそうな顔してたから。

本当はこっちにしたかったけど、乃愛にはまだ刺激が強すぎるから我慢しといてやる」



こっちと言いながら、今度は人差し指であたしの唇を撫でる。



「~~っ変態! バカ!」



「顔真っ赤にしてそんなこと言っても、全然効かないけど?

そうやって俺の言うことにいちいち反応して、頭の中もっと俺でいっぱいになればいい」



そう言った叶真はいつもの余裕たっぷりな笑顔。



もうとっくに叶真に惹かれてる。



だけど、手の届かない人だって思ってるから言えないのに。



「叶真なんか好きにならないんだからっ!」



だからムキになっていつもこう言い返してしまう。



そんなあたしを笑いながら、手を振って帰って行った叶真。



こうして、イジワルばかりしてくる彼氏様とのデートは、最初から最後まであいつのペースで幕を閉じた。