大したことじゃないのに、叶真があたしに話してくれないことなんて山ほどあるのに。
何だかこのことにすごく腹が立った。
誰のせいでこんなことになったと思ってるのよ。
「どうせあたしは名前だけの彼女だから知る必要ないんでしょ?
叶真が本気で付き合ってないことくらいあたしだって知ってるんだから」
「……おまえ、周りのヤツらが言ってること信じてんの?」
叶真の低い声にハッとなる。
ちょっと隠しごとされたからって、子供みたいな態度とってあたし何してるんだろ。
叶真が本気であたしと付き合ってないことくらい、こんなふうに口に出さなくてもわかってるのに。
「助けてくれたことにはお礼言うけど、あたしは納得してないから」
それでも後には引けないこの自分の性格を恨むしかない。
言い逃げするみたいで嫌だったけど、これ以上ここにいたら叶真に余計なことまで言ってしまいそうだった。
だから、叶真が呼び止める声を無視して、あたしは教室に逃げた。