「やっぱいいよ」
夏帆のことだから話を聞けば絶対に嫌がるし、やめろって言われるのは目に見えているから。
「私に遠慮なんてしなくていいから。
もしかして、好きな人でもできたの？」
図星を突かれたわけでもないのに、あたしの胸がドキッと音をたてる。
好きな人じゃないんだけど、気付くと目で追う自分がいて。
「そんなんじゃ……ないよ」
歯切れの悪い答え方をしたあたしを夏帆は見逃さなかった。
「人と話す時はちゃんと目を見て話す！」
無理矢理に顔を上げさせられ、夏帆の方へと体の向きを変えられる。
じーっと見てくる夏帆から目を逸らそうとすれば、怒られることはあたしがいちばんよく知ってる。
やっぱり、あたしには隠し事できないと腹をくくり、夏帆の目をちゃんと見て小声で話すことにした。
