イジワル彼氏の不器用な素顔




「遅くなっちゃったなぁ」



同じ委員会の委員長が送ってくれると言ってくれたけど、反対方向だったし悪いと思って断ってひとりで帰っていた。



家までの帰り道の途中にあたしも小さい頃に通ってた幼稚園があって、そこから見慣れたあたしと同じ高校の制服を着た男の子が出てきた。



「いつも遅くまですみません」



あたしが見たのは後ろ姿で顔はこの時わからなかったけど、背が高くてスラッとした人だなっていう印象だったのは覚えてる。



「いいのよ。お母さんを亡くされて、お父さんもあなたも大変でしょうから。

私でできることがあったら言ってちょうだいね」



年配の優しそうな園長先生がその男の子にそう話しているのが聞こえた。



立ち聞きするつもりはなかったけど、何となく気になってその彼の後ろ姿をずっと見てしまったんだ。



「ねぇねぇ! お兄ちゃん、今日のごはんなぁに?」



園長先生と話している彼の右手を引っ張って揺らしたのは、彼の膝の高さくらいの身長の小さな可愛い男の子。



その男の子に「お兄ちゃん」と呼ばれた彼は、その場にしゃがんで男の子に目線を合わせる。



そして、大きな手をその男の子の頭の上に置いた。