「ちょっ! 返して!」
俺の右手に握られている手提げバッグを見て、明らかに慌てだした乃愛。
コイツがこんなに必死になって取り返そうとするなんて、この中にそんなに大事なもんでも入ってんのか?
「叶真、お願いだから返して!」
お願い、ねぇ……。
乃愛からお願いなんて言葉を初めて聞く。
「おまえのお願い聞いてやったら、この中身見せてくれるわけ?」
焦っていた乃愛は、中身を見せろって言った俺を前に途端に黙り込む。
何を隠してるのか知らないけど、俺に言えないものって何だよ。
数分経っても乃愛は喋る気配を見せない。
痺れを切らした俺は、手に持ったままの手提げバッグを開けることにした。

