「あり得ないから、それ。本当にサッカーが好きだから見てただけ」
私がきっぱり言うと、せいは少し表情を柔らかくしてそっか、とだけ言った。
どうして、そこでホッとしたみたいな顔するの…。
なぜか急に鼓動が速くなった。
私…最近おかしい。
「ね、席は後ろでいいよね?」
沈黙を破るようにふいに舞花がいつもの優しい声でそう尋ねてきた。
「そうだね、桃は体育委員の方に行っちゃってるし…そうしよっか!」
舞花と一緒に後ろまで行くとなぜかせいまでくっついてきた。
「あんたは友達のとこいきなよ」
いつも一緒につるんでいる篠田君の事を顎でさす。
「ああ、そっか。お前たちと一緒にいすぎて忘れてたわ」
「なにそれ」
思わずプッと吹き出すとせいは頭にポンと手を触れた。
「うるせっ、じゃーな」
それだけ言うとせいは篠田君の方へ歩いて行った。
なんだよ。うるせって、可愛くないなぁ。
そんなせいを見て少し頰が緩んだ。
「やっぱり……」
「え?舞花?」
ぽつっと呟かれた言葉に振り向くと舞花が下を向いていた。
「ううん!なんでもないよ!」
私が呼んでから少し遅れて舞花はこっちを向いて笑って首を横に振った。
「そう?じゃあ座ろ!」
用意された椅子に座り2年生の種目を後ろから見る。
1年生の女子の種目は障害物競争。
5番目にあるからまだまだ暇だ。

