「お、なな〜と舞花!」
開会式が終わって舞花と一緒に応援席に行こうとすると後ろから結人の声がした。
「なによ、あんたは青でしょ?」
私達は赤、結人のクラスは青。
応援する席が離れているはずなのにこっちに来た。
「なんだよ、いけねーのか。てか、お前マジで走るの?!」
その話しか。私がうんざりした顔になったのを見て肯定と受け取ったらしい結人はぶっ!と吹き出した。
「あはは!!まじかよ!ありえねー!」
「笑わないでよ!無理やりやらされてるんだからね!?」
ムカッときて結人に詰め寄る。結人はまだ声を上げて笑っている。
「だって、ふはっ!お前がリレーをとか大丈夫なのかよ」
なんと涙まで出ちゃっていて人差し指で目元を拭う結人。
本当、失礼なヤツ。
私は腕組みをしてフン、と顔を背けた。
「いいよ、言ってれば。私の次はせいだし安心して走れるからね」
「お前、俺に責任押し付けるつもり?」
前の方から聞きなれた声がして顔を戻すと、結人の後ろからせいが歩いてくるのが見えた。
「大丈夫!私ちゃんと走るから〜!せいは安心してアンカーを務めて下さい」
へへん、と得意げに笑ってみせる。
「あ、せい君頑張ってね!」
隣に来た舞花がせいに向けて力強くそう言った。
その表情が少し緊張しているように見えたのは…気のせいじゃない。
「あぁ、ありがとな舞花」
せいはいつもの優しい表情で微笑んだ。
その顔を見て舞花も安心したのか肩の力が抜けて嬉しそうに笑った。
私にはそんな顔全然してくれないくせに。
数える程しか見たこと無い。
心の中でモヤっと霧がかかった気がした。
「あ、7月に試合があるんだけどさまたなな来るの?」
思い出したように結人がそう言った。
そっか、せいは部活やってないけど結人はやってるもんね。
「いってあげるよ。そうだ、3人で行かない?」
私は2人の方に顔を向けた。

