せいはこっちを向いてキョトンとした顔をした後、またフッと口元に笑みを浮かべた。
その顔は、入学式の日に見たあの顔と少し似ていて
どこか悲しそうだった。
「大事なものがとられちゃったから…かな」
「え?それだけ?」
それって、お気に入りのおもちゃとられちゃったレベルの事じゃない?
「そう、それだけ」
せいはニッといたずらっぽく笑うとかけてあったバックをとってまたこっちに戻ってきた。
「なにそれ!もう今日めっちゃ怖かったんだからね?!」
私と結人に怒ってたんじゃないと分かった事の安心感と、意味わからないとこで怒ってたせいへの怒り。
「結人もわけわからないって言ってたよ。ちゃんと謝っておきな〜」
ツン、と肘でせいを軽くつついた。
「結人にはまた明日話しておくから平気」
そっけなくそう言うせいはプリントの束を持ってドアに向かって歩き出した。
「もう!待ってってば!」
私も急いで書きあがった名簿を持ってせいを追いかける。
「なな」
隣を歩いていると、ふいにせいが呼んだ。
「ん?何?」
顔を上げてせいの方を見ると、こっちを見下ろすせいと目があった。
せいは何か喋ろうとしたのか、口を少し開けたがすぐに閉じて「なんでもない」と言ってまた前を向いた。
「あ、あっそう…?」
な、何を言おうとしたんだろう。
余計きになるじゃない…。

