「…ら…なん…」
ボソッと聞こえてきたせいの声。
「え?なに?」
ちらっと視線をせいに向けて不機嫌そうに聞く。
機嫌を悪くすると戻りにくいのは私もみたい。
「…なんでもねーよ」
せいはさっきよりも声のトーンを低くしてそう言うと、また名簿を作り始めた。
何よ、また不機嫌になっちゃって。
私もせいもこういうとこは似てるんだなぁ。
はぁ、とため息をついて私はせいが書き終わるのを待った。
「あ〜〜終わった〜〜」
「お疲れ様」
グッと伸びをするせいにはい、とペットボトルを差し出す。
せいは目をパチクリさせて不思議そうに差し出されたペットボトルを受け取った。
「飲んでないから大丈夫だよ。昼間買ったやつだからぬるいけど。私の分までやってくれたお礼」
「うわ、ななが珍しいことするから明日は雨だな」
「本当失礼だな」
ふはは、とせいは可笑しそうに笑うと早速渡したお茶を飲み始めた。
「それ渡してもう帰る?」
ガタッと立ってプリントをまとめる。
「そうだな。行くか」
せいも立ってカバンを取りに自分の席に向かう。
あ、そういえば。
「せい、なんで今日あんなに不機嫌だったの?」
大事なことを忘れてた。

