「せい!」
急に大声で呼んだからせいはギョッとして目を大きく見開いた。
「なんだよいきなり」
言わなきゃ、言わなきゃ。
口を開けて言葉を出そうとするのに、なぜか喉に突っかかったようにでてこない。
「ふはっ!なんだよ口開けて」
私の様子を見ていたせいが笑い出した。
「いや、あのね?」
普通に声は出るのに、いざ大事なことを言うとなると言葉が出なくなる。
「うん?何?」
せいは頬杖をついて、いつも舞花に見せるような優しい顔で微笑んだ。
トクンー…
「あ、の…」
あれ…気のせいかな?
一瞬胸があったかくなった気がして、ドキッとした。
いつも見ない顔を見てしまうから、無駄にドキドキするんだ。
「実は、結人と付き合う事になったの」
言えた!!
私は微笑むせいの顔をなぜか直視できなくて下を向いてしまった。
「報告。それだけ…」
下を向いたまま私はそこで言葉を切った。
せいは今、どんな顔してる?
なんて言うのかな?

