「お前が遅いーってか丁寧すぎ」
貸して、と私からペンと紙を奪うとサラサラと名前を書き始めた。
「私は丁寧に書かなきゃ字が汚くなるの」
せいは書道習ってたから字が綺麗だからいいけど、私は丁寧に丁寧に書いてもせいの字には及ばないんだから。
「丁寧に書いてもどうせおなじだろ?」
せいはこっちをちらっと見てからフッと鼻で笑った。
「酷すぎー。そこまでひどくありません」
バシッとせいの腕をぶって文句を言った。
あ、れ?
徐々に頭が冷静になってきてふと思い出した。
私達、喧嘩っぽくなってたよね?
今、せい普通じゃない?
私が急に黙ったから考えを察したのか、せいの顔から笑みが消えた。
「ねぇ、今日はなんであんな怒ってたの?」
せいは手を止めてじっと私の目を見ている。
私もせいのキラキラと光る黒い目から逸らさないで見ていた。
「昨日…」
掠れた声でせいで話し出した。
「何してた?夜」
「え、夜?」
思いがけない質問に拍子抜けした声が出た。
夜って…私は…。
「結人と会って…た」
そこまで声に出してハッと思い出した。
付き合うってこと、せいには言ってない!!

