「うう〜きつーい!」
帯をギュウギュウに締められてとても息苦しい。
「我慢しないよね。ほら、もうそろそろでしょ?」
お母さんが最後にギュッと帯を締めたせいで、ゔっと言うとうめき声が上がった。
時計を見ると5時20分。
「わ!髪の毛やらなきゃ!」
洗面所まで駆け寄る事は出来ないので小さな歩幅で急足で歩く。
先にクルンとまいておいた髪の毛を右の耳の下でまとめて少しお団子にしてとめる。
そこにこの間ななに選んでもらったピンク色の花の髪飾りをつけて…
「よし!いい感じ…だよね」
鏡とにらめっこして念入りにチェックをする。
「舞花ー、もうせい君外にいるよー」
「え、はーい」
慌てて返事をして洗面所から出る。
巾着の中身をチェックして私は玄関に向かった。
「じゃあ、行ってきまーす」
「気をつけてね、いってらっしゃい」
お母さんに手を振ってドアを開ける。
「ごめんね!せい君」
外に出るとせい君は壁に寄りかかっていた。
ドアの音でこっちを向いたせい君はニコッと笑うと壁に寄りかかるのをやめてこっちに来た。
「いや、大丈夫だよ。舞花浴衣似合ってるな」
ポン、と私の頭に手を乗せたせい君は微笑んでいる。
「ありがとう」
かぁ、と熱くなる頰が赤くなるのを隠すように私は下を向いた。
「よし、行くか!」
せい君はそう言うと私の歩幅に合わせて歩いてくれた。
外に出て道路を道なりにまっすぐ歩く。

