せいは下を向いていて表情はわからないけど
肩を大きく上下させていて怒っているのはよく分かる。
「せ、せい?な、に?また私、何か…した?何もして、ない…よね…?」
声が震えて上手く話せない。
私にこんなに怒るせいは初めて…。
朝の事も思い出して手も震えてきた。
思わず飛びのいてしまって前の机に背中をより掛けていたが、少し離れてせいの机に近づく。
怖い…けど。せいの話しを聞かなきゃ。
「せ、いっ」
こっちを向いたせいの目を見て思わず口を閉じてしまった。
キッと睨みつけて悪者を見ているような目をしてる。
「お前は、舞花が舞花がって…舞花の事しか考えてねーだろ!俺の気持ちは考えた事もねーんだろ!」
幼馴染の中で一番落ち着いた雰囲気のせいが、こんなに声を荒げるなんて…。
私は呆然としてせいの言葉を聞くことしかできなかった。
「俺は舞花の事をそういう対象で見てないって言ってる。
なのに、お前達は舞花ばっかりで無理やり俺と付き合わせようとしてる。舞花の気持ちもきいてんのか?
お前たちがただお似合いだからっていう理由で付き合わそうとしてるだけだろ!」
バン!!とまたせいが机を叩いてプリントがバラバラと落ちた。
「俺は、俺は…」
せいはそう言うと唇を噛み締めてまた下を向いてしまった。
な、何これ…。
私は身動き一つ出来ず、せいを見つめるばかりだ。
違うって…言えない。舞花の気持ちをバラすわけには行かない。
それに、せいの気持ちを無視していたのは事実。
てっきり、両思いだと思ってたのに…。
でも、せいは違うって言ってた。
それでも、舞花を応援したくて…私も結人も舞花ばかりを優先してた。
どちらも同じ幼馴染なのに。

