「ねぇ」
思い切って私はせいに声をかけてみた。
別に話しかけるな、とは言われてないもんね。
「ん?なに?」
せいは作業する手を止めずに相変わらず冷たい声で聞き返してきた。
「何がそんなに気にくわないの?確かに強く肩を叩いちゃったかもしれないけどそんなに怒ること?」
なるべく冷静に、冷静に…。
カチャカチャとホチキスをさっきよりも乱暴に止めながら口調は穏やかにしてせいに聞く。
「そういうわけじゃない。お前は舞花と俺をくっつけたいんだろ?お望み通りにするよ。それでいいだろ?」
「は?なんか質問の答えになってないんだけど…」
なに、いきなり舞花の事持ちだして。
せいは手元に視線を落としたまま続ける。
「俺はななとは幼馴染やめてただの他人になった方が、舞花と付き合いやすくなると思ってね」
そしてフッと口端を少し上げて薄笑いを浮かべた。
思わず私は手を止めてせいをじっと見てしまっていた。
な、なにその自嘲したような笑い方…。
今言ったことに、笑うような所なにもないじゃん。
背筋がゾクッとして私はせいから視線を外してまた作業する。
「そっか…。舞花のためにね。ありがとう」
ハハ、と小さく笑ってチクンと心が痛む感覚をまた味わう。
「ーって、ありがとうってお前さ!」
バン!!!!
「ひっ!せ、せい?」
机が割れるんじゃないかっていうくらいの物凄い音がしてギョッとしてせいを見る。
叩いたのはもちろんせいだし、いきなり怒り出して声を荒げたのもせい。
わ、私また変なこと言った?!

