「な、に…それ」
いつの間にかガクガクと膝が震えていて立つことが出来なくてペタン、と座り込んでしまった。
恐る恐る両手を挙げて見てみると、手まで細かく震えてる。
こわかっ……た。
光も何もない真っ黒い目に無表情。
真顔なんて今まで何度も見たことあるのに、今回はとてつもなく冷たくて怖かった。
『幼馴染やめる』って、なんで…?
私が怒ったから?そんなのたまにあることじゃん。そんなに怒ることなの?
いや…そうやって甘えてるのかな…?
ガクガクと震える足をどうにか踏ん張って立たせて壁を伝いながら階段を降りた。
教室行きたくないな…。怖いな…。
ギュッと拳を握り締めるけど、その拳まで怖くて震えている。
「…な、な?」
その声にハッとして顔を上げると、心配そうな顔をした桃がいた。
「探したよ!せい君が戻ってくるの見てもしかしてって思ったけどーって、なな?」
呆然と桃の顔を見つめるばかりで何も言えない。
でも、何かがこみ上げてくるような…そんな感覚が止まない。
「も、も…」
「うん?」
そっと私の肩に手を触れて優しく微笑んだ桃。
だめ…もう我慢できない…。
「っふ、…ぅっ、ぅうっ…もっ…も…」
下を向くとポタポタと涙が床に落ちていくのが分かった。
視界が滲んできて床もはっきりと見えなくなっていく。
「ふぅぅ…ももぉぉ〜!わ、たしっ」
「うん、うん。いいよ。思いっきり泣けば」
ギュッと桃が抱きしめてくれるのが分かって私はキュッと桃の制服を掴んだ。
「ううう〜〜ももぉ〜〜ぅう〜」
グズクズ泣いてみっともない。
けど、いつの間にか足の震えは止まっている。
ポンポン、とリズムよく背中を優しく叩かれるのが気持ちよくて私はしばらく桃の腕の中で泣いていた。

