「…で?なに?」
せいと一緒に来たのは人があまり通らない階段。
ここはどの昇降口からも遠いから朝は全然使わないし、2人でいても舞花にも結人にもバレないはず。
「ああ、それでさ…昨日の事なんだけど」
気まずそうにそう切り出してきたせいは目を色んなところに泳がせて私を見ようとしない。
「なんか色々ごめん。それと、結人とは別れた…?」
「え、何でそれしってんの?」
早くない?!結人とせい今日まだ会ってないよね?昨日会ったとか?
目を丸くしてじっとせいを見る。
せいは「あー」とか「えー」とか言いながら挙動不審に手で顔を隠したり焦った表情をしたり…とにかく怪しい。
「結人にさっき聞いたんだ!しかも、お前ら偽だったんだって?」
焦った表情からギロリと攻めるように睨んできたせいに、今度は私が焦る番だった。
「そ、それも聞いたの?」
まじかっ!!結人自分から偽の事も持ち出して秘密だとか言ってたくせに暴露するってひどい!
「聞いたよ。余計なお世話だったな。あいにく俺は舞花をそういう対象として見てなくてね。それはこれからもそうだよ」
「そ、それは困る!!」
ぶっきら棒に喋るせいの腕にとっさに掴みかかった。
驚いて見下ろす目が間近で見える。
「せいと舞花はおにあいなのに?どうして?舞花じゃ駄目なの?じゃないと…」
じゃないと…私が諦められなくなる。
舞花を素直に応援できなくなる。
2人が両思いならもっと吹っ切れるはずなのに…。
「なな…」
せいは私の両腕を優しく掴むと自分からゆっくり離した。
私もせいの腕を離してそのまま距離をとる。
「お前の考えてることよく分かった。お前の気持ちも…知ってたけど、改めてよく分かったよ…」
「…ぇ」
そう言うせいの顔がとても悲しそうで、瞳はきらきらと光りながら揺れていた。
「せい?どうしたの…?」
一歩近づいて手をせいに伸ばす。
けど、せいは一歩足を引いて私との距離を変えず、そして触らせようとしなかった。
な、なんでせいがそんなに悲しそうな顔してるの…?
私の気持ちが分かったってなに?

