「お前、せいと喋らないでほしい」
「…え?」
結人は、何を言ってるんだろう?
真剣な目で見てくる結人の目をただ呆然と見返す。
「舞花は、お前とせいが両思いなんじゃないかって心配してんだ。見ててわかる。
だから、もしせいがななに想いが向いてたときのために早くから諦めてもらうようにしたいんだよ。わかる?」
「わ、わ、分かるわけないじゃん!」
思わず大声を出してしまった。
周りの人がちらちら振り返ってきたり横目で見たりしてる。
ちょっと感情的になりすぎちゃった…。
「だから!お前はせいと話さないでくれればいい。舞花が不安にならないように。せいが舞花に心が向くように」
小さい声だけど、鋭い声色でそう話す結人。その顔は少し険しい。
「なんで?せいと舞花はもう両思いのようなもんじゃないの?」
そう思ってきた。そう思って悲しんで苦しんだ。
私の質問にチッと鋭く舌打ちする結人。
な、なによ…!思わず目を見開く。
こんな結人は初めて見た。
「さっきも言っただろ?せいは舞花をそういう目で見てないんだよ。
だから、不安の種になるお前がせいを拒否してくれれば風向きも変わるかもしれないだろ?」
「私が…不安の種?」
私は何をしたっていうの?
不安の種なんていい被害妄想じゃない!
グッと眉間に力を入れて結人を睨み返す。
「あんた、あたし達が切っても切れない縁だってことぐらい分かってるでしょ?私もせいも幼馴染なの。話すぐらい普通でしょ?!」
本当、結人ってば本当に頭おかしくなっちゃったの?!
「俺は舞花が幸せになれればいいんだよ。お前だって幼馴染の協力ぐらいしたらどうなんだよ」
「そのやり方が理不尽だって言ってんのよ!」
お互い睨み合いながら歩く速度を落とすことなく進む。
でも…、結人が舞花を想う気持ちが分からないわけじゃない。私だって舞花を応援したいって思ってきたもん。
自分の気持ちに気付いてしまったとしても…。
私は目元を緩めてやんわりと微笑んだ。
「幼馴染を壊す必要はないよ。もっと違う方法を探そうよ」

