「貴方にだけは言われたくないことですが、私は甘んじて受けましょう。と、いうことで、自分の身が大切なのでお帰りください」
「…ほんと、失礼なやつだな、お前!」
45度頭を下げて失礼がないようにしたのだが、伝わらなかったみたいだ。
ハルさんは拗ねた様子を隠しもしない。
ブスッとした表情をしても不細工にはならない綺麗な顔は、なんだか自分とは別の生き物のようだ。
「…ハルさんは、どうしてアイドルになったんですか?」
「は?いきなり、なに」
「いきなり、聞きたくなったんです。…いやなら答えなくていいです」
綺麗な顔。
そして人を惹き付ける魅力。
それを持っているから、見目麗しい世界に乗り込んでいったのだろうか?
その答えを持っているのは目の前のこの男で、私は彼の目を見て答えを待つ。
「…興味、なかったんじゃねーの」
「そうですね。アイドルには興味ないです」
「だったら、なんで」
「貴方があまりにも不遜な態度で、しかも猫を被ってまでやっているお仕事で。なんだか急に興味が湧いたんです」
小花ちゃんから聞いたのとは、全然違う人物像。
“美少年アイドル、晴野カナト”
アイドルのハルさんも、この不遜なハルさんも、同じ人物で…本当に不思議だ。
「だから…」
「貴方に」
「え?」
「ハルさんに興味が湧きました。なので教えてください」
どうしてアイドルになったのだろう。
そして、どうして三浜にいるのか?
結局はそこに戻るのだが、心底疑問なのでこれは聞き出したい次第だ。
