「…どうされました?」

ご乱心ですか?
ならば、外でやってください。

心中の言葉をごくりと飲み込み、恐る恐る尋ねてみた。

するとハルさんは尚もテーブルの下からだけど、答えてくれる。


「……べつに…」

「別に?…問題ないなら、隠れてないで帰る準備をしましょう。その格好だと、地元民に見つかってしまいますよ?」


見つかっても問題ないなら、そのまま出てもらいますが。
有名だと自覚があるなら、もっと変装していてほしい。

私が声をかけると、そろっとテーブルの下から顔を出すハルさん。

その頬はほんのり赤い。

そうか、赤面していたのか。その顔を人に見られたくなかったのだな。納得。

何故赤くなっていたのかは謎だが、ひとつ頷いた私は「で、どうします。着替えますか?」と尋ねた。


「…着替えない。普通にしてた方がバレないし、あからさまに変装するとそっちの方が危ない」

「そんなあからさまな変装道具はありませんが、了解です。じゃあ、くれぐれも見つからないよう気を付けてくださいね」

「…お前は俺のマネージャーかよ」

「お前、でもマネージャーでもないですよ。私はただの一般人で、通りすがりの三浜観光者をもてなしたまでです。…まぁ、お節介が過ぎたことは自覚してますが」


変装してもしなくても、この芸能人!って感じのオーラは消えないと思うから、まぁいいかと思う。

今までこれで生きてこれたのだから、これからだって大丈夫なのだろう。

というか私が心配しすぎ?
小花ちゃんが『過激なファンは家までストーキングする人もいるから、芸能人は大変な仕事なんだよっ』て言っていたから、なんだかもっと危険が常に付きまとうものなのだと、思い込んでいたのかもしれない。