「お前、変に思わないのか?」
さて、この御仁を人目に触れずに送り届けるにはどうすればいいのか…
というか私、過保護じゃない?
1度会っただけの人を、家に上げてご飯を食べさせ送り届ける…世話焼きすぎる。いや、それ以上か。
私が勝手にやったことだけども、この人もこの人だよなぁ。
付いてくるなよ、普通に。
危ない人だったらどうするつもりだったのだろうか。
いくら女だからだって、油断してると痛い目をみてしまうぞ…
なんて、また見当違いな心配をしているところにアイドル様、もとい、ハルさんが話しかけてくる。
“変”?なにが?
この状況のこと?それとも私が?
「………………」
私の憮然とした顔をしてハルさんを見返した。
もし私のことだったらぶん殴ると意気込みをいれて。
「…俺のことだよ。違うだろ、この前と、今と」
どうやら違ったようだ。
「ん?なにがです?」
「っ、だから、普段やってるアイドルの“俺”と、今の“俺”の違いを変に思わないのかっ…」
「あぁ、そういうことでしたか」
なにを必死こいて聞いているかと思えば…そうだな、確かに違う…違うけれども、
「それが晴野カナタさん、なんでしょ?」
「……え?」
「まぁ、正直あの時は普通に戸惑いましたけど、よく考えれば当然のことですし。人と接するとき猫被るなんて当たり前ですよ。私だってよく被ってますよ、猫」
「……………」
「アイドルで輝いてる?晴野カナタさんも、今ここにいるミハマソーダ好き仲間の晴野カナタさんも、一緒にハルさんですから。まぁ、私からしたらどっちが表でも裏でも構わないのですが」
関係ありませんので。
きっと、今後すれ違うこともないでしょう。
その事を淡々と告げると、ハルさんは何を思ったか突然テーブルの下に隠れた。
え?
ええ?なに、地震?
この人、アクションが独特すぎる。
