「あー食べた。お腹いっぱい」
ソーメンって食べると結構腹持ちがいい。
夕飯にソーメンはどうかとも思ったけど、ミハマソーダがあるならやっぱりソーメンでしょう。という単純思考でソーメンに決定していた。
私と同じテーブルで、目の前に座っているアイドル様を見ると、渋々ながら食べていたソーメンを時を同じくして食べ終えていた。
微妙な顔をしていたが、お腹が空いていたのであろうか、空になった器をみて安堵が込み上げる。
ただソーダは半分ほど残していた。
やはり組み合わせが気に入らなかったのだろうか?
美味しいと思うのに。
「じゃあゴチソウサマ、ということで。アイドル様、どうします?今日は三浜に滞在ですか?ホテルまで送りましょうか?」
「……まず、その『アイドル様』っていうのは止めてくれ」
勝手に連れてきてご飯を食べさせられ、そして送迎を申し出る私をどう思ったのか知らないが、アイドル様はその美しい顔を歪ませてため息を吐いた。
そして思ってもみない返答に、私は目を丸くする。
「え、じゃあ何と呼びましょうか。晴野さん?はるのん?はるはる?」
「………普通でいい。変な呼び方をするな」
「ほうほう、ではハルさんで」
「…………………」
「まさかアイドル様を省略で呼べるとは。あーなんて身に余る光栄でしょうか」
呼び名を口にした瞬間の、彼の顔は敢えて伏せさせてもらおう。
私の棒読みな台詞にも、目を伏せていただけると有り難い。
