ずるっ…ずるずるっ


ごく、ごく、ごく、




「んーうんまい。さいこー」

「……………」

「ミハマソーダには、やっぱりソーメンだよなぁ」

右手に箸、左手にミハマソーダのビンを持って至極ご満悦で私はそう言った。

目の前には特製つゆと、家にあって去年の余りもののソーメンだ。

「さぁ、どうぞ食べて飲んでくださいな。美味しいですよ」

「…こんな、組み合わせ…」

「あ、ソーメンは去年のですが、未開封だったものですから。賞味期限は来年です」

「……………」


そんなこと聞いてない。と顔に書いてあったが、それは見ない振りをして、私は黙々とソーメンとソーダを消費する。


あの後、この仏頂面なアイドル様をどこへ連れてきたといえば、それは私の自宅で。

なんとなく、というか絶対人目に晒してはいけないんだよなーと考えて、出した答えは浜辺から5分と掛からない場所にある家(うち)しか思い浮かばなかった。

幸いうちは父子家庭で兄弟もおらず、父は仕事で夜にしか帰ってこない。

今日は特に同僚との飲み会があると言っていた。

真面目な父は、私を寂しがらせないため普段は19時には帰宅してくれるが、週末のこの日はたまに飲み会に誘われるそうだ。

極力断っているらしいが、やはりお付き合いは大事だということで、私も了承してそちらを優先してもらっている。


…まぁ、一番の理由としては飲み会に言ってもらえると、そこでご飯を食べて帰ってきてくれるので、その日は何も作らずにコンビニ弁当で済ませられる…というのがあるのだが。


本人には言えない訳なのだ。