「ファンじゃない…って、じゃあなんであの時あそこに…」

「友達の付き添いです」

「友達?」


他に人いたっけ。と思い出そうとしているのか、眉間に皺を寄せて思惑な表情を浮かべる彼。

私は大いに頷いて応える。


「いました。私の後ろに、ですけど。アイドルが好きで……特にあなたのことが好きみたいで、あの日もどうやってかは知りませんが、撮影があることを知って付き添ってほしいと頼まれまして」

「…………」

「恥ずかしがりやなんです。あなたが近くに来ただけで照れて、隠れちゃうくらい」

「…そう」


理解はしたが納得はしていない。

そんな感じだと思う。けれど彼はちゃんと頷いたので、まぁよしとすることにして。


「なのであなたには微塵の興味もありませんので、私とミハマソーダ飲みながらご飯を食べましょう」

「…言ってること、矛盾してる」

「そうですか?…では、言い方を変えましょうか。“アイドルとして”のあなたには興味ありませんが、ミハマソーダ好きのあなたには興味があるので、一緒にご飯食べましょう」


絶句。

という表現であっているだろうか。

私の言葉を聞いて動くまでに僅かなタイムラグがあった。


放心する彼の手を再び引いて、私は考える。



これは小花ちゃんに話してもいいことなのだろうか。

アイドル、しかも晴野カナトファンな彼女に聞かせるには、多大な神経を使いそうだ…と話す前から少し肩を落とした。