ちょっと(いや大分)理解不能なアイドル様は思考の外に置いておいて、私は後ろを振り返った。

「…小花ちゃん、アイドル…ええと、カナト、くん?だっけ…もう行っちゃったよ。大丈夫?」

「……っふあ!…え、え?あれ、カナトくんはっ」

放心状態の小花ちゃんの肩を持って揺さぶると、意識を戻したのか我に返った。

そうして周りをキョロキョロ見渡す。

「小花ちゃん、もう皆どこか行っちゃったよ。撮影も終わったみたいだし、もう帰らない?」

「い、いない、の…そんなぁ」

絶望!といった雰囲気を体全体で表す小花ちゃんは、ショックを受けてその場に座り込んでしまった。

「小花ちゃん!どうしたの!」

「…りっちゃん…ごめん…」

「なに?どこか痛い?」

「胸が…いや、それはいいんだけど、い、いまさら…」

「?いまさら?」

うるっと上目遣いで恥ずかしそうにした小花ちゃんは本当に小さな声で言う。


「…こ、腰が、抜けちゃった…」


思わず噴き出してしまった私は悪くないと思う。