体よく現実逃避していた私に、某アイドル様はステキな笑顔浮かべてきた。

は?

と思わず身体を固くしていると、アイドル様はそれはもうステキすぎる笑顔でこう言った。


「ぼくのファンの子なんだよね?こんなところまで、わざわざ来てくれてありがとう!嬉しいよ」


にっこにこ微笑んで手を差し伸べてきた。


は?


その手は半ば強引に私の手を引っ付かんだ。

そしてぎゅっと込められる力。


「これからも応援よろしくね。それと、この撮影のことなんだけど、まだ皆には秘密にしているんだ…だから、君も秘密にしてくれると嬉しいな」


儚げ、といいますか、思わずこちらも切なくなるような笑みを浮かべてそう言い切ったアイドル様は、パッと手を放して「それじゃあね!」と手を振って海岸出入口の方へ向かっていった。


そんな嵐のような彼をみて慌てたお兄さんが「ごめんね、それとこの事はくれぐれも内密に!」と言い去り、アイドル様の後を追った。


「……………」


一体なんだったんだ


謎と疲れと少しの呆れを残して去っていった少年の後ろ姿を眺める。

その姿が遠ざかるにつれ込み上げてくる何かを、私はため息と一緒に吐き出したのだった。