ミーンミンミンミン……

蝉の声が部屋に響く。

夏も始まったばかりの7月。

私は幼馴染であり、彼氏の恭弥の部屋に居座っていた。


「あーづー……。恭弥……扇風機の風独占しないで……。」

「うるせー、俺の部屋だ。」

机に向かってシャーペンを動かす恭弥の手は昔の手とは比べものにならないくらいゴツゴツしていて大きかった。

「きょーうちゃん。」

「華美がきょーうちゃんって呼ぶときはお願い事があるときだよな。」

「うん、扇風機。」

「あーのね、俺は勉強してんの!俺の人生今年にかかってんの!」

引きつった笑顔で血管を浮かせてしゃべる恭弥の顔に思わず笑ってしまった。

「なに笑ってんの。」

「ごめんごめん、てかさ。恭弥地元で就職なんだからそんな真面目に勉強しなくてよくない?恭弥なら余裕余裕!」

「…………。ほら、うちわ貸すから黙ってろ!」

なんか心なしか恭弥の顔が寂しそうだった……ような?

恭弥に限ってそんなことあるわけないか。

私は投げられたうちわで思いっきり顔をあおいだ。