――side イオリ
ボクはただ、認めてほしかっただけなんだ。
有名な陶芸家の父とピアニストの母の間に生まれてたボクは、小さい頃から芸術家としての道を用意されて生きてきた。
だから、ボクは期待にこたえようと必死に、その道から外れないように努力してきた。
普通じゃだめなんだ。ボクには、非凡な才能がなくてはいけない。
そうして、ボクは彫刻の道を選び、あの男と出会った。
ボクはトキワがずっと、うらやましかった。
卒業制作で、ボクは氷彫刻の大作を仕上げ、絶対に最優秀をとるつもりでいたのに。
実際に、最優秀作品に選ばれたのは、ボクと同じで氷彫刻の作品を出品した、トキワだった。
その時、ボクはどれほど悔しかったか。
学部長の元に飛んでいったボクは、ものすごい剣幕で問い詰めた。
「どうしてトキワの作品なんだ!どうして、どうしてボクの作品じゃない・・・!?技術も、才能も、絶対にボクのほうが上なのに・・・!!!」
すると、学部長は諭すようにこう答えた。
「たしかに君の作品は精巧で美しい。技術はトキワくんより遥かに上だ。しかし、彼の作品には人を惹きつける魅力がある。そこに、強い想いを感じられるんだよ」
それを聞いたボクは、地獄の底に突き落とされた気分だったね。
それからボクは、今まで以上に努力した。
ひたすら氷と向き合ってきた。
幸い、ボクは両親の影響もあって、卒業後してすぐに次々と仕事の依頼が舞い込んで彫刻家としての自信を取り戻していくことができた。
一方で、卒業後はまるで息を潜めるように活躍の場を失ったトキワを見ているのは、正直気分がよかったよ。
