あなたが私にキスをした。


「寒くないの?」


と僕はトーコにたずねた。


「ふしぎだね・・・さむいの」

「ふしぎ?」

「ふしぎだよ。わたしこの前まで氷だったのにね」



トーコは自分の両手を夜空に伸ばした。

まるで、自分の身体が「透明」ではないことを確かめているかのように。



「それなのにどうして今は、寒いなんて思うんだろう」

「・・・それはきっと、あたたかさを知ったからだよ」

「じゃあ、」



そう言ってトーコは身体を起こした。

そして真っ直ぐに僕を見つめる。



「トキワがふるえていたのも『あたたかさ』を知っているから?」

「・・・え?」

「レイカさんがいなくなったから、わたしをつくったんでしょう」



そうだ。

レイカがくれたぬくもりを取り戻したくて、僕はあの日から毎日毎日彼女を彫った。

さみしさから、目をそらすために。



ただ、ひたすら。