あなたが私にキスをした。


僕は慌てて玄関を飛び出し、雪の上をバランスを崩しながら走る。



「トーコ!トーコォオオ!!」



カッコ悪いってわかっているけど、だけど、こんなの耐えられない。

どうしていつも僕は大切な人を失ってしまうんだろう。

雪に足を取られて前のめりに倒れた。

膝をついた僕は、そのまま立ち上がる気力もなくて一人肩を震わせて泣いていた。





どのくらい、そうして泣いていただろうか。




「…トキワ?」


名前を呼ばれ、顔を上げると

そこには――・・・



「レイ…っ」



レイカ、と言いそうになって慌てて言葉を飲み込む。

着ているコートやブーツがレイカのものだったから。

だけど、そこにいたのは、レイカではなく、トーコだった。

トーコはそんな僕を見透かしているように、少しだけ寂しそうに笑った。


「こんなところで、なにをしていたの」


トーコを探していたんだよ、なんてカッコ悪くて言えなくて


「散歩だよ」


なんて言ってみた。